疲れてくると、時々車をすべらせて立ち寄るホテルです。
スタイリッシュな空間での仕事が日常であればあるほど、
ときには、うんとクラシックな空間に身をおきたい思いが募ります。
日々、動員する感覚の中で欠けているものを補いたいという思い・・・
流行を先取りすることがファッションではないという思いや、
呼吸する場所を探しながら、自分自身の個性を確認したいという思い・・・
それが、このホテルに魅かれる要因となっているのかもしれません。
ともすると失いかける奥ゆかしさを、取り戻すことのできる大切な場所です。
不思議な安堵感がひろがり、心が穏やかになります。
このホテルの庭園内の離れにあるお食事処は
穏やかな陽がこぼれ込むような和空間です。
縁に佇むと軋むような音をたてる、この古い個室が特にお気に入り。
仕事で多くの人に囲まれる日こそ、このお部屋をリザーブします。
空間という語彙に含まれる「すきま」という意味・・・
物と物の間にかぎらず、人と人の間にも「間/ま」は大切ですね。
この「間/ま」こそ、昔からこの国では大切にされてきたもの。
茶道にしても、香道にしても、肝要とされる美の原点と聞きます。
障子を開け放つと眼下にひろがるのは三河湾・・・
海に浮かぶのが、竹島と呼ばれる小さな島です。
このホテルから、この島を臨むスポットは数あれど、
このお部屋からのロケーションが、なぜか一番好きなのですね。