先回綴った犬山「有楽苑」の続き、本日2度目の更新です。
写真↓ は、織田有楽(斎)の造った茶室「
如庵(じょあん)」です。
昭和11年、国宝茶室に指定されたそうです。
国宝ともなると、大磯(三井家城山荘)からの移築は困難を極めたようで、
「如庵保存協議会」や「移築実行委員会」が設けられ、当時の文化庁や
東京国立文化財研究所、並びに愛知県教育委員会等が指導にあたり、
最先端技術が駆使され、万全の方策をもってのぞまれたようでした。
ところで国宝の茶室ですが、指定されているのはわずか3席のみで、
この「
如庵」の他には、「
妙喜庵の待庵」と「
龍光院蜜庵席」があり
それぞれ利休作の茶室、そして遠州好みの茶室として知られています。
この有樂苑「如庵」の場合は、いくつか「写し」もあり公開されていますから
ある意味「身近」には感じますが、茶道文化史上では屈指の存在のようです。
有楽苑 国宝茶室「如庵」
旧正伝院書院の南縁側に座すると、「如庵」を左手に望めます。
ここから眺める茶室がシンプルで美しく一番好きです!
外観からして、
利休の草庵茶室とは少し異なりますね。
有楽という茶人は、利休のみを師として仰いでいたわけではなく、
どうやら、
紹鷗(じょうおう)や
珠光(じゅこう)を敬慕していたようで
利休の師でもある
紹鷗の供養塔を正伝院に建てたりもしていたようでした。
こちら↓ は、「如庵」露地にある
石の井筒(左)と
蹲踞(右)ですが、
石の井筒は「佐女牛井(さめがい)」と呼ばれているそうで、
先述の
村田珠光の井筒「佐女牛井」と同形だからのようです。
一方、茶室の前に汲まれた蹲踞(水鉢)は、
加藤清正が釜山沖から持ち帰ったものだとか...
「釜山海」と呼ばれ、波に洗われた水穴がみてとれますね。
前石の刻銘を見ると、なるほど天正七年とありました。
国宝茶室 「如庵」の土間庇とにじり口
妻に「如庵」の額が掲げられています。
この茶室は有楽の最晩年の作でもあるそうで、
本能の赴くまま・・・と云っては過ぎるかもしれませんが
利休の好みをなぞりながらも、オリジナリティーを発揮しているよう...
南青山の新根津美術館を設計された建築家の隈研吾氏が
「茶室とは、日本の建築の実験室だ」と仰ったそうですが、
そこに「もてなし」のスピリットがあれば茶室になるとも...
そんな言葉がよぎりますが、有楽も楽しみながら造ったのでしょうね。
にじり口の位置が面白い...と思いませんか?
正面ではないのですね!
土間に設えられ、庇で覆われている点も親切な気がします。
それにしても、この茶室の窓の多さ!
実はこの日、この「如庵」の内部を見学させていただきましたが、
窓が多いため、やはり中は大変明るくエアリーで、
外から眺める印象よりは、ずっと広く感じられました。
二畳半台目の内部...
中柱から、向かって右は掛け込み天井です。
座してふと見上げると天窓もあり、とにかく明るい...
茶室というには、あまりに開放感があります。
30分ほど、ここでお話を伺いましたが贅沢な時間でした。
同席されたのは6名ほどですが、思いの他ゆったり座れました。
有樂苑 国宝茶室「如庵」内部
この「如庵」は千利休亡き後、造られた茶室だけあって...
有楽の独創性というのでしょうか、それらが随所に色濃く出ています。
あくまで華美を避け、茶室に暗闇の非日常を求めた利休...
ですがこの茶室にはご覧のとおり、淡い光が溢れ風が通います。
手前座側のふたつの窓は「有楽窓」と呼ばれ、
外側から竹が詰め打ちにされているのだそうです。
障子に映る竹の影が美しく、風情を添えていました。
実際、この時代の主流は「織部格」であったそうですから、
(古田織部の造った三玄院「篁庵/こうあん」も窓が多い)
時代を読む能力に長けていた有楽ならではの選択かもしれません。
さらに、床の脇には斜めに壁が造られていてユニークでした!
専門家の方がこれを「筋違いの囲い」と仰っていました。
足元の黒い三角の鱗板の部分が、給仕の通る道なのだそうです。
壁面がこうして斜行されることで、実際広々と感じるのですね。
(これは、窓から覗いただけではわかりかねることでした)
また、手前座の前には火灯型にくり抜かれた板がありますが、
茶室内でこの板の前に座すると思いのほか圧迫感はなく、
むしろ趣があって、この言葉が適切かどうかですが「おしゃれ」な感じ!
くり抜かれた部分から光が入り、手前座を明るくする工夫だそうです。
この日、床の花入れには詫びた椿の一枝が飾られ、
まさに有楽好みの「竹」と「椿」の空間でした。
この茶室でなら、「有楽井戸」もきっとしっくりきたのでしょうね。
床柱はいびつな粗けずり(に見えました)で、ワイルドなもの。
材名を尋ねましたが、わからないということでした。
框(かまち)も白木ではなく黒塗りで、これが武家好みなのだそう...
織田家で脈々と受け継がれたDNAが主張しているような床でした。
そしてこれもよく知られるところですが・・・
腰張りには古暦が使われ、当時としてはこれもハイセンス!(笑
「如庵」が「暦張りの席」と云われた所以ですね。
確か250枚くらいあると伺いましたが、最古の暦は「寛永年間」のもの。
これは、にじり口側の壁に張られていました。
一番新しいのでも江戸時代末の「慶應」の暦・・・
う〜ん、デザイナーとしての有楽の才にも素直に白旗です!
遊び心というか、アイディアには驚かされますね。
ちなみに、尾形光琳もこの茶席の写しを造っているようです。
現存する京都、仁和寺の「遼廓亭」がそれだそうです。
有楽の「如庵」は、デザイン性にも優れアイディア満載の茶室!
いつの時代も多くの茶人の垂涎の的だったということのようです。
※ 写真は茶室内での撮影は、もちろんできませんが外部からならと
お許しをいただき、茶室を出てにじり口側から撮ったものの拡大です。
※ 参考資料:冊子「有楽苑」/編集発行:名古屋鉄道株式会社
/監修: 中村昌生(京都工芸繊維大学名誉教授)
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有楽苑 国宝茶室「如庵」======================================
愛知県犬山市犬山御門先一番地
TEL; 0568−61−4608
OPEN; 9:00〜17:00(3月 1日〜 7月14日)
9:00〜18:00(7月15日〜 8月31日)
9:00〜17:00(9月 1日〜11月30日)
9:00〜16:00(12月1日〜 2月 末日)
*無休
*初釜 正月
*特別公開 秋
*呈茶席あり(書院南側縁側)
入苑料¥1,000:呈茶料別途¥500
【国宝茶室「如庵」見学(¥2,300)の日程はお問い合わせください。】