法相宗大本山 薬師寺の中門・回廊・西塔
更新が遅れましたが、先日訪ねた奈良の続きです。
今日は若草山焼きの祭典の日、きっと賑わいをみせることでしょう。
聖火の時代行列に続き、逸品尺玉が打ち上げられる大花火も迫力ですね。
山焼きの一斉点火は18:30ということです。
この厳かな瞬間を目にすることもなく、奈良を後にしたのは実に残念...
さて、今回は西ノ京まで足をのばし、薬師寺を訪ねてみました。
興福寺と共に、法相
(ほっそう)宗大本山としてその名を連ねています。
薬師寺東塔の解体修理が、いよいよ始まったと耳にして以来、
風雪に耐え抜いた三重の塔を、解体前に今いちど拝んでおきたいと...
この日の境内に人影は薄く、時がゆったり流れているようでした。
案内によると、平城京遷都に伴いこの地に移されたそうですが、
幾多の災害に見舞われ、東塔を除く建物は復興されたもののようです。
大半が昭和時代の再建であることは、よく知られるところでしょう。
法相宗大本山 薬師寺<金堂>
こちらの金堂も昭和51年(1976)に堂々の復興...
奈良が世界に誇る白鳳時代の至宝、薬師三尊像
(国宝)が安置されています。
医王如来とも呼ばれる薬師如来像が、穏やかな眼差しで迎えてくれました。
中尊の脇侍には、月光菩薩と日光菩薩の立像です。
仏像の知識をもちませんが、好きなのは向って右の日光菩薩像です。
(中尊の坐像からみれば、左脇侍が日光菩薩像)
不謹慎な表現ですが、艶かしささえ漂わせ、女性的な柔和さです。
少し首を傾げ、身体をS字にくねらせた姿のバランスが好きです。
中央の薬師如来像の前を右往左往して、脇の両菩薩像を見比べましたが、
三曲した身体は微妙に異なり、日光菩薩の方が胴周りもすっきりしています。
同行者は月光菩薩が男性的でお気に入りだとか、好みはいろいろですね。
さて、こちらが修理が始まった国宝の三重の塔です。
法相宗大本山 薬師寺 <東塔(国宝)>
この東塔は、薬師寺で唯一、創建当時(白鳳時代)から残る建物...
来月中には素屋根で塔全体が覆われるそうで、しばらく拝めません。
明治以来、約1世紀ぶりの解体修理だそうですが、巨大な覆いです。
クレーンも無い奈良時代に創建されたかと思うと、改めて驚きです。
1300年の歴史が刻まれたこのままを、遺してほしいところ...
ですが、心柱が空洞化していて劣化が進んでいるそうなのです。
修理が完了するのは、平成30年と伺いました。
法相宗大本山 薬師寺 <西塔>
こちらは金堂と同様、「龍宮造り」と呼ばれる建築様式の西塔です。
白鳳時代の西塔は兵火で焼失したそうで、昭和56年に復興されたようです。
春日大社でも触れましたが、朱の鮮やかさには目を奪われます。
仏教伝来以来、この薬師寺のような巨大な寺院が多く建造されましたが
金堂やこのような塔には「朱」が塗られ、壁画などにも用いられたようです。
朱色を水銀から人工的に造り出す技術は、古代からあったそうで、
地殻変動による地中の露出で、水銀が硫化状態の土を発見したのが始まり...
古代人はその赤黄色に、神と崇める太陽や炎の色を重ねたようですね。
こちら
も朱色が鮮やかです。
金堂から眺めたこの建物は、伽藍最大の大きさを誇る大講堂です。
薬師寺詣でのもうひとつの目的、中村晋也氏の彫刻がここに祀られています。
法相宗大本山 薬師寺<大講堂>
この大講堂では、重文の弥勒三尊像が迎えてくれましたが、
その表情に胸を打たれたのは、先述の釈迦十大弟子(中村晋也作)でした。
それらは言葉では言い尽くせないほど、衝撃を受けた十人の像でした。
其々の像の眼差しの奥底には、悲哀が凝縮されているようでした。
法相宗大本山 薬師寺 東院堂(国宝)
こちらは歴史を感じさせる東院伽藍です。
前身は養老年間(717−724)に建造された東禅院だそうです。
現存のこの建物は鎌倉時代(1285)の再建で、東塔に次ぐ古い建物です。
御本尊の聖観世音菩薩(国宝)が、凛と美しい立ち姿で迎えてくれます。
ほとんどが昭和に再建された建物が並ぶ薬師寺...
境内には、大切なものを現代に復活させようとした強い意志が漲っています。
ですが、やはり歴史が刻まれたこの東院堂がいいです。
古い建物には、包容力を感じます。
法相宗大本山 薬師寺<鐘桜>
境内の梅のつぼみが膨らみかけていました。
薬師寺 白鳳伽藍の梅
今の時期は、「白鳳伽藍(東院堂も含む)」のみの公開で、
「玄奘三蔵院伽藍」の礼門はかたく閉ざされていました。
ここで云う玄奘三蔵とは、あの高名な三蔵法師のことで、そういえば昔々、
孫悟空が広めた教義が、遣唐使を通じて日本に伝来したと習いましたね。
薬師寺 玄奘三蔵院伽藍の礼門
その玄奘三蔵から教義を託され、慈恩大師が開創したのが「法相宗」で、
これは奈良仏教に属し、大講堂には熱心な学僧衆が集ったようです。
平安仏教や鎌倉仏教とは異なり、宗教上の実践行為は祈祷を行う程度で
律令体制下で庇護を受けながら、仏教の教理の研究に励んだそうです。
つまり、葬祭に出ることもなく、檀家はもたず、きっとお布施などもなく、
焼失した建物の復興には、ずいぶんとご苦労があったようです。
法相宗の教義について、HPに
解りやすく解説されていました。
■ www.nara-yakushiji.com/guide/hosso.html
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■ 藤原氏の氏寺として尊宗された興福寺と春日大社の記事
(blog内リンク)
・ 興福寺関連エントリー
2009奈良・興福寺 〜美しき阿修羅像〜
・ 春日大社関連エントリー
2012奈良詣で 〜千古の森の春日大社〜
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奈良法相宗大本山 薬師寺
<世界遺産 古都奈良の文化財>---------------------------------------------
奈良県奈良市西ノ京町457
www.nara-yakushiji.com/index.html
TEL: 0742-33-6001
拝観時間:8:30 〜 17:00
有料Pあり(休ヶ岡八幡宮の傍ら)
最寄IC.西名阪自動車道 郡山IC.
*カーナビでは薬師寺南門に誘導されます。
薬師寺東別院
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東京都品川区東五反田5丁目15-17
www.yakushiji.or.jp/index.html
TEL: 03-3443-1620
Pなし
最寄駅:山手線五反田駅(東口)